恋に落ちたマフィアと、アガサの古城 2ndシーズン 3-5


 ドラコは性急にズボンとアンダーウェアを脱ぎ捨てると、アガサのジーンズのボタンを外して、いとも簡単に彼女からそれを剥ぎ取った。
――ずっとこうしたかった。もう一秒だって我慢できない。

 ドラコはアガサに体を重ねて、唇へのキスをせがんだ。
 目と目が合って、アガサの手がドラコの顔を包み、優しくキスをされると、ドラコは愛しさに胸が締め付けられて理性が吹き飛びそうになるのを堪えた。
 【初めて】のアガサには絶対に優しくするとドラコは決めていた。二人で同じ快楽を味わいたかった。

 唇から、顎に、そして首から、鎖骨へと、ゆっくりと唇を這わせ、舌先で触れていく。夢に見ていた通り、まるで本物のマシュマロのように柔らかくてきめ細やかな肌にドラコは高揚する。吸い付くだけで、こっちが溶かされてしまいそうだ。
 膨らんだ胸の谷間まで来たとき、指先でブラの肩紐をおろして、それを容易く取り去った。

「どうしてそんなに外すのが上手なの」
 背中のホックを片手で外しただけで、アガサが複雑な表情を浮かべた。
「外し方が分からないフリでもすれば良かったのか? 俺は童貞じゃないんだぞ」
「あなたがまだバージンのときにこういうことをしたかったわ」
 ズキン、とドラコの胸が疼いた。
「だまってろよ……」


 アガサはされるがまま、ベッドに横たわっていた。
 バストにドラコの熱い息がかかり、吸い付くようなキスをされる。そのままドラコは、アガサの体の中心に唇を這わせて下に進んでいき、お腹に何度もキスをして、下腹部まで到達すると、パンティに指をかけて、ゆっくりとそれを引き下ろした。
 アガサの太ももを持ち上げ、その内側から膝に向かってキスを落としていくと、そのまま足先まで唇を沿わせて行く。「綺麗な脚だ」、と、ドラコは囁いた。

 アガサはドラコの手が彼女の足を優しく撫でるのを眺めていた。その綺麗で、温かい手に、アガサは抵抗なく身を任せていた。
 男性的に節だった指はアガサの指よりずっと太いが、知的で美しい滑らかさを持っている。短く整えられて几帳面に磨かれた爪の指先は、驚くほど優しく繊細に動くようだ。

 不意に、ドラコはアガサの膝を持ち上げると、片手をベッドの上について、ゆっくりと体を沈めてきた。
 ベッドが軋み、ドラコの口から漏れた熱い吐息がアガサの耳にかかる。
 その前に熱く高まったドラコの一部を見て、果たしてそんなに大きなものが自分の中に入るのだろうかとアガサは思ったが、案の定、彼が入ってくると内臓が押し上げられて頭のてっぺんまで突き上げられるような、大きな衝撃がアガサの体内を駆け巡った。

 すごく硬くて柔らかい生き物みたいだ。その生物は熱を持ってドクドクと脈打っている。
 ドラコがどんどん奥まで入ってこようとするので、アガサは息を詰まらせてドラコの胸を押し返した。

「……痛い?」
 掠れる声でドラコが聞いてきた。
「痛みは、それほどでもないけど。それ以上奥に来られたら、体全体が風船みたいに弾け飛びそう……」
「……ふざけてるのか?」
「100パーセント本気よ、ちょっと苦しいわ、ドラコ……」

 ドラコは一度挿入を解いて、体を離してくれた。代わりに、手をつかって優しくアガサを愛撫しはじめた。
「ここを触られるのはどう?」
 アガサは率直に答えるしかなかった。
「産婦人科で内診を受けているみたいな感じがするわ」
「嘘だろ、医者は君にこんなふうに触れるのか? 悪夢だな……」
「お医者様は手袋をしてるわよ、ドラコ。それに、そうね、しこりがないか確かめるために、もっとぐりぐりやられる」
「そんなふうにされたら痛いんじゃないのか?」
 確かに、産婦人科での内心は痛い。
「これは痛くない?」
 アガサは頷いた。ドラコはとても優しく触ってくれるので、痛いというよりも、少しくすぐったいくらいだった。

「あなた、いい産婦人科医になれるわよ」
 アガサに言われて、ドラコは盛大に眉をしかめて苦笑いした。
「医者は、こんなこともするのかな」
 そう言うと体を屈めて、ドラコは今度は口で直接アガサを愛撫し始めた。
 絶対に、医者はそんなことはしないだろう、と思いながら、アガサは身もだえして耐えた。
 手で触られるよりも柔らかくて生温かい感触に、予測不能な動きをされて、くすぐったさは度を超えて、ジリジリとした熱が急速にアガサの体を開放していった。

 ドラコは執拗に、隅々まで探るように舌を這わせると、やがてアガサが気持ちよく反応する場所を見つけ出した。
 少しずつ、ジックリと、アガサの体に熱を与え、高めていく。そうする間にも手ではアガサの太ももやお腹を優しく愛撫し続けた。
 生まれて初めて感じる、危険なほどの快楽にアガサは腰を引き、そろそろ止めて欲しいとドラコに訴えた。
 だが、ドラコは止めない。
 それどころか、さらに強く彼女に吸い付き、追い立てはじめた。
「ドラコ……」 
 高まりすぎた快楽の波に体が耐えきれなくなりそうで、アガサは唇を噛んで耐えた。
 まるで頂点に達したジェットコースターが一気に加速してレールを下るように、アガサはハッと息を飲んで小さな悲鳴を上げた。
 自分の意思とは無関係に腰が浮き、体が震える。
 アガサは生まれて初めて、イクという感覚を味わった。
 ようやくドラコが口をはなしてくれたので、アガサは心底ホッとしてベッドの上に力なく横たわった。体の奥がまだビリビリしている。

「今のは浅瀬の水遊びみたいなものだよ、アガサ。今度は俺と一緒に、もっと深みで気持ちよくなろう」
 全く容赦のないことに、ドラコはまだ最初の快楽に悶えているアガサの体を引き寄せると、すぐにまた彼女の奥深くに入って来た。

 たった今、快楽の絶頂を迎えたばかりのアガサの体は、不思議なことに、彼女の意思とは無関係にさっきよりも容易に、さらに奥までドラコを受け入れた。まるで、自分の体じゃないみたいにドラコを求めて濡れている。

 鍛えられたドラコの厚い胸板がアガサの柔らかな胸を圧し潰し、二人の体は一つになって揺れ動いた。
 二人の体の摩擦がまるで巨大な電気エネルギーを引き起こしているようだ。危険なほど大きな快楽の波が打ち寄せ始めるのを感じて、アガサはドラコの腕の中で身もだえした。
 ドラコの熱い吐息がアガサの顔にかかり、時折、ドラコの口から苦しそうな喘ぎ声が漏れ出る。
 もう、どれくらいこうしているのだろう、と、時計を見ようとしたら、すぐにドラコにたしなめられた。
「目を反らすなよ。アガサ、ちゃんと、俺を見て……」
 見上げると、ドラコの額に、汗で濡れた髪が張り付いている。
 アガサは指先で、その髪をかき上げて、ドラコの濡れた瞳を覗き込んだ。
「ん……、アガサ、」
 ドラコが苦しそうに瞼を下げた。
 その時にアガサは気づいた。ドラコに触れられてアガサの体が反応するように、アガサが触れば、ドラコの体も反応するのだということに。

 途端に、アガサはもっとドラコに触れてみたい衝動にかられた。ドラコがどんな反応をするのか、もっと見てみたくなる。
 アガサは遠慮がちに、初めて会ったときにアガサがスプーンで焼いた、ドラコの右肩の傷に触れてみた。ゴツゴツしている。
 ドラコは真っすぐにアガサを見下ろしているが、触られて嫌がる様子はない。
 アガサは次に、イタリアで撃たれた胸の傷と、お腹の手術の痕を、優しく指先でなぞってみる。ドラコの肌はとても熱く躍動していた。
 スーツを着ているとスリムに見えるのに、実はよく鍛えられて厚みと太さのある腰は、休むことなく妖艶に動き続けている。
 アガサは両手をドラコのわき腹から、腰に、尻に、そして太ももへと沿わせてみた。硬くなったり柔らかくなったりするドラコの筋肉を感じながら、何度も確かめるように、優しく撫でる。

 そんなふうに触っていると、いきなりドラコに手首を掴まれて頭の上でベッドに押さえつけられた。

「あまり触られると、俺だけ先にイキそうだ」
 ドラコは本当に辛そうな顔で囁いた。
「大丈夫なの?」
「もう、あんまり大丈夫じゃないよ」
「どうしたらいいのか教えて」
 と、アガサは聞いた。その言葉を聞いただけで、ドラコはまた呻くような声を漏らす。
「……そっちこそ、どうして欲しい?」
「ギュってしてほしいわ、ドラコ」
 アガサはドラコの首にしがみ付いて、彼の耳元で囁いた。
「ギュってして」
 愛しさがこみ上げて、ドラコはアガサに腕を回し、ベッドの上で抱き上げた。
 堪えようもなく本能のまま、いっそう強く腰を押し付けると、アガサもそれに応答して、両足をドラコに巻きつけて、その時初めて自分からドラコを求めて腰を振った。

 その瞬間、ドラコが大きな喘ぎ声を上げ、アガサの奥深くで魚のように跳ねた。
 ドラコの体が大きく震え、その衝撃と摩擦がアガサにも伝わって全身を震わせると、不意に想像もしたことのないような快楽の波に突き上げられて、アガサは息ができなくなる。
 慌てて安全な陸に引き返そうとしてもがいても、もう遅かった。ドラコの海色の目がアガサを捕らえ、沖へ沖へと強引に誘う。
 何度も、何度も、力強く腰を打ちつけられて、最後の一突きでついに高みにまで追いやられ、アガサはこらえきれずに悲鳴を上げて体を反り返らせた。
 そのまま激しい快楽の渦の中に落ちて行って、息もできずに、本当に溺れてしまいそうになって、アガサは悶えながら無我夢中でドラコにしがみついた。

――愛してるよ、アガサ
 酸欠で薄れていく意識の向こうで、ドラコが優しく囁くのが聞こえると、アガサは目を閉じた。





 瞼の間から射し込む陽光がくすぐったい。
 目を開けると、睫毛が触れるほど近くにドラコの顔があった。もしかしたらキスをされていたのかもしれない。
 目が合うと、ドラコはニコニコして静かに問いかけてきた。
「気分はどう?」
 全身に上手く力が入らず、あちこちがヒリヒリしている。アガサは少し考えてから答えた。
「大仕事をやり終えた気分よ」
「君が? それとも俺が?」
 ドラコがイタズラに笑う。
 酸欠で意識を失ってしまったことを恥ずかしく思って、アガサはドラコの胸を軽く押し返した。
「はじめてだったんだから、もう少し手加減をしてくれても良かったんじゃない?」
「したよ」
 と、今度は大真面目にドラコは言った。
 そしてつい先ほどの行為を思い出して、ドラコは熱を帯びたとろんとした眼差してアガサを見つめ、目を反らさずにそのままアガサの唇を食んだ。
「やっとできたね。こんなにイイとは思わなかったよ……」
 
 心から愛する女性と肌を重ねるのは、ドラコにとっても初めての経験だったのだ。
 アガサのことが大好きだからもちろん期待はしていたが、実際に体験してみるとそれはドラコの想像をはるかに上回っていた。肉体的な快楽はもちろん、愛する人と一つになることで心が満たされ、完全な自分になれた気持ちがする。それは、とても神秘的な感覚だった。

「私は、想像していたのとはちょっと違ったわ」
 とアガサが言ったので、ドラコはショックを受けて真顔になった。
「もしかして、期待外れだった?」
「もちろん、すごく良かったけど……」
 アガサは頬を赤らめて言った。
「まるで溺れているみたいだったわ」
「それは君が、まだ泳ぎが下手なせいじゃないかな」
 あなたは私の愛の中を泳いでいて決して逃げられない、と、イタリアにいる時にアガサから言われた事を思い出して、ドラコは同じ言葉を返した。アガサもその事に気づいて、さらに頬を赤らめる。
「根に持っているのね」
「いいや、君の言ったことは的を射ていたと思う」
 ドラコが身を乗り出してアガサの上にのしかかり、膝を入れてアガサの両足を開かせた。やっていることは強引なのに、ドラコは無邪気に微笑んでいる。

「もっと君の愛の中を泳いでみたい。今度はさっきより、もう少し深いところまで……」
「どういう意味?」
「もう一度したい」
 硬くなったものを太ももの内側に押し当てられて、アガサはドラコの胸を押し返した。
「長距離マラソンを走り切った後だから、2、3日休まないと無理よ」
「そんなに待てない。今すぐだ」
「待って、ドラコ……あッ、ちょっと――」

 ドラコはもう、少しも手加減してくれなかった。体全体で愛を表現されて、瞬く間にアガサは溶かされてしまう。

 ようやく一つになることを知った新婚夫婦は、それから日が暮れるまで夢中で体を絡め合い、愛を確かめ合った。





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