月夜にまたたく魔法の意思  〜あとがき〜





 ウェブ小説サイトを立ち上げようと思った時、一番最初に書きあげるのは「月夜にまたたく魔法の意思」にしよう、と決めました。
 これは私の友人、「優ちゃん」にささげる物語です。

 高校時代、私は引っ込み思案で、休み時間は一人で教室で本ばかり読んでいるような子でした。だからなかなか友だちができなくて、いつも浮いてたんですよね。
 一方、優ちゃんはすごく可愛らしくて、それなのにどこか凛としていて、入学当初から人気のある子でした。私の目から見ても、二度見したくなるほど素敵な子でした(笑)
 優ちゃんはちょっと不思議な子で、いつも友だちに囲まれているけど、何を考えているのか分からないようなところがありました。
 スキー授業へ行くバスの座席で私の隣の席が不自然にあいているとき、優ちゃんがなぜか私の隣に座ってくれたことが忘れられません。
 誰に対しても嫌味のない、サラリとした優しさを持っている人。

 それぞれ別の大学に進学して、卒業を間近にした頃、彼女は突然の白血病で、短い闘病生活の後に亡くなりました。
 それから私は「死」というものをリアルに感じるようになって、しばらくは優ちゃんの死が受け入れられずにいました。
 今、彼女はどこにいるんだろう、って、夜眠る前の暗い部屋で考えます。だから、書こうと決めました。


 「月夜にまたたく魔法の意思」は、未熟な魔法使いが夢や、希望や、喜びや、愛によって、邪悪な闇に立ち向かうお話です。
 主人公の名前は――優。

 死を宣告されながらも生きるために闘った女の子の物語です。
 そして私の友人が生きるはずだった素晴らしい人生を、優には生きてもらいたいと願って書いた物語でもあります。
―― 「ねえ、朱雀、死ぬのが恐い? それとも、生きるのが恐い? 私はね、どっちも恐いよ」
―― 「どうせ恐いことばかりなら、ありのままでいい。私はここに書かれていることを受け入れる」

 この世界にもし魔法があるなら、それは、私たちの強い願いや、私たちの心から溢れる言葉だと思うから。
 本物の魔法使いは、言葉一つであなたの心を和ませ、落ち込んだ心に希望を与えてくれる人。
 高校時代、私の心から一瞬で孤独を取り去ってくれた優ちゃんもまた、魔法使いだったのかもしれません。

 つたない文章で、しかも更新が遅くて大変恐縮ではありましたが、最後まで読んで下さったみなさま、本当にありがとうございます。
 そして優ちゃん、ありがとう。私はずっと、忘れないよ。


 優ちゃんにささげる魔法の物語。無事にEND
 2017 ag_harukawa