第1話−16

 団探偵学園校長室。
 コレジオ学園文芸部の吉村に変装した七海が、仮面を脱いだ。

「Qクラスの連中、なんとか事件を解決しました」
「そうか」
 重厚なデスクの後ろに座る団校長が、ゆっくりと顔を上げた。

 自分の教え子たちが初めての事件を無事に解決したことは嬉しかったが、七海は小さく溜め息をついた。
「まあ、結果的に3人もの犠牲者出しちまったし、褒められたもんじゃありませんよ。でも先生、一体何を企んでんですか? あんなヒヨッ子どもをいきなり実践に放り込んで。先生のやり方とは思えませんね」

「奴らが再び動き出した」
「え?」

 団校長の重たい口調に、七海は耳を疑った。

「冥王星が再び動き出したんだよ」
「え……」

 冥王星、という言葉に、七海の顔が急に強張る。

「奴らが……。もしかして団先生、春乃紗奈江をQクラスに加えたのは、それが原因なんじゃ……」
「春乃くんはQクラスとうまくやっているか、七海」
「あ、はい。最初は緊張しているみたいでしたが、最近は美南や連城の助けもあって、だいぶなじんできているようです」

 七海の報告に、団校長は満足そうに頷いた。

「あの子の持つ超感覚は、まだ不完全ではあるが、これからQクラスの大きな強みになるだろう。そして彼女にとっても、Qクラスの存在が助けになるはずだ」
「団先生……。まあ確かに、春乃は鋭い感覚の持ち主です。俺の変装に気づいているのは、おそらくQクラスの中でもあいつだけでしょう。団先生がそう仰るのも分かりますよ」

「私は、Qクラスの諸君をいづれ私の後継者とするつもりだ。そして、そのときは宿敵である冥王星に、彼らを当たらせる。七海、時間はあまりない。あの子たちのバックアップを、お前に任せる」
「わかりました」

 団校長と七海が深刻な面持ちで見つめあった。



1話(完) 2話へつづく