*あるもの



手に入らなかったものが、たくさんあった。

             成人式の振り袖

                        酒飲みの父に怯えない平穏な夜
       
                        進学

                                          ……あなた



ないものをあるように見せて、劣等感ばかりの辛い日々を

もがきながら、今日まで生きてきたよ。

そしたら、いつの間にか私の中に詰まった。
             幸せと、自分を信じる気持ち。

失いはしなかったんだ。
ユーモア。空想力。生きること。


私は書く。これからも書く。私にはないものを書く。




そうして形作られてゆく。
        
あるものへと。





―― どうか世界よ、幸せであれ。